ギタリストのゆき かつや(@manic_lab)です。
ギター歴31年目。プロデビュー19年目。音楽を全力で愛して生きてます。レッスンでは現在約60名の生徒さんを指導中→詳しくはプロフへ
ドミナントマイナーを知っていますか?
もしくは
ストロベリーフィールズ進行を知ってますか?
音楽理論に詳しい方なら「サブドミナントマイナー」というのは聞いたことがあるかもしれません。
今回はドミナントマイナーと呼ばれるコードの使い方&コード進行を解説します。
・ドミナントマイナーを使った代表曲
・ドミナントマイナーの音楽理論的な構造
・ドミナントマイナーを自分のオリジナル曲で使う方法
上記をわかりやすく解説します。
※この記事は3分ほどで読み終わります
もくじ
【コード進行】ドミナントマイナーで光と陰を作曲する【Beatles/Strawberry Fields Forever】
ドミナントマイナーの雰囲気【代表曲 Strawberry Fields Forever】
ドミナントマイナーとは何ぞや?
実は僕自身、このコード進行のことを普段「ドミナントマイナー」とは呼んでいません。
Ⅴmのあの進行
とかって呼んでました(笑)。
Ⅳmのことをサブドミナントマイナーと呼ぶのが一般的で、それに準じて、じゃあⅤがマイナーになってるから「ドミナントマイナー」と呼ぶようになったんですね。
まあ、名前はともかく、、、
このコード進行を最大限に使った有名曲が、BeatlesのStrawberry Fields Foreverです。
歌が始まって、ドラムがインする3、4小節目「to Strawberry Fields〜」がこのドミナントマイナーが使われています。
憂鬱のドミナントマイナー【非現実感】
ピアノでコードとメロディを弾いてみました。
どうでしょうか?この雰囲気。。。
色んな表現があると思いますが、僕が感じるのは
憂鬱な気だるさ
です。
このStrawberry Fields Foreverという曲自体が、かなりサイケデリックで空想的な夢の中にいるような楽曲なので
・フワフワした非現実感
・空間や常識がグニャリと歪むような感覚
もありますね。
まさに「思っていた常識がグニャリと曲がり、非現実の世界に投げ出される感覚」というのをこのドミナントマイナーを使うという手法で見事に表現しています。
Strawberry Fields Foreverの冒頭4小節のコード進行
では、この4小節がどういうコード進行になっているのか。
オリジナルキーで書くと
|Bb |Bb |Fm |Fm |
この Fm が「お〜ぅ、現実が歪むぜ〜、、、」という憂鬱な演出をしているわけですね。
奥田民生「息子」の冒頭もドミナントマイナー
このようなコード進行の例は、わかりやすいところでいうと奥田民生「息子」の冒頭でも聞くことができます。
こちらも冒頭3小節目「見てやがる」の「る」からがドミナントマイナーです。
何だか、切なさというか哀愁もありますよねぇ。。。
奥田さんは生粋のビートルズフォローワーなので、このようなコード進行が出てくるのは必然でしょう。
歌の冒頭からのコード進行は
|D |D |Am |C |
この Amがドミナントマイナー。う〜ん、効いてますよねぇ。
ドミナントマイナーの音楽理論的な構造【ⅠーⅤm】
ドミナントマイナーは ⅠーⅤm
では、このドミナントマイナーが何故こんな憂鬱な非現実感を生むのか、音楽理論的に説明してみます。
まず、BeatlesのStrawberry Fields Foreverのコード進行で見ていきましょう。
|Bb |Bb |Fm |Fm |
この曲はBbがキーでトニックなので、ダイアトニック表記をするとBbがⅠ(イチ)ですね。
Bbのダイアトニックコードは
Bb Cm Dm Eb F Gm Adim
Ⅰ Ⅱm Ⅲm Ⅳ Ⅴ Ⅵm Ⅶdim
となります。
なので、普通だとⅤはドミナントなのでメジャー(またはⅤ7)となり、 F として使われるはずです。
もしも、冒頭4小節が
|Bb |Bb |F7 |F7 |
という「きっちりダイアトニックなコード進行」だったら。。。こうなります。
これは 笑。もう完全に陽気な楽しい曲ですよね。
しかし、Strawberry Fields Foreverでは Fm になっています。
なので「えっ。。。なんか、不安。。。」という裏側の暗い影の方に行くんですね。
そして、不思議な違和感を生みます。
ローマ数字で表すと
ⅠーⅤm
となります。
もうこれは ストロベリーフィールズ進行と呼んでいいかと思います(ミュージシャン同士だとそれで通じます)。
奥田民生「息子」のコード進行も
D ー Am なので Ⅰー Vm になっていますね。
ダイアトニックコードについては【音楽理論】ダイアトニックコードという神の無双ツールを使う!の記事で詳しく解説しています。
【音楽理論】ダイアトニックコードという神の無双ツールを使う!ⅠーⅤm進行の音楽的な分析
何でⅤはドミナントなのにマイナーにしちゃっていいの?
と、当然思いますよね。
これは結果論からいうと、たまたまそうしたらカッコ良かったから、とも言えますが(笑)。
ちょっと真面目に考えてみましょう。
「Strawberry Fields Forever」の場合
Bb ー Fm ですよね。
この Fm というのは 平行調メジャーで置き換えると Ab になります。
つまり、この冒頭4小節は
|Bb |Bb |Ab |Ab |
と置き換えることができます。実際メロディもAbの音を歌ってますよね。
でも Abだと何だかちょっと明るくてあの感じは出ないんですよね。
「息子」の場合
では「息子」ではどうでしょう。
DーAmで、Amの平行調メジャーはCなので
DーC と置き換える
ことができますね。
メロディもC音を歌っています。
平行調についてはギターで平行調を瞬時に見つける方法【音楽理論】の記事で詳しく解説しています。
ギターで平行調を瞬時に見つける方法【音楽理論】ドミナントマイナーの解釈その① ポップス、ロック的な「♭Ⅶの代理」と考える
ロックやポップスではこういう風に、キー(メジャートニック)の1音下のメジャーコード(♭Ⅶ)がよく使われます。
キーCだと
|C |C |Bb |Bb |
とか、キーGだと
|G |F |C |G |
とかですね。よく聞く感じだと思います。
・ちょっとカッコつけた感
・アクセルをグンと踏む感
・元気でやんちゃ感
を出すのにもってこいの進行です。
これらのコード進行での♭Ⅶメジャーを代理コードである平行調マイナーⅤmに置き換えた、ものがドミナントマイナーの
ⅠーⅤm 進行
というわけです。
さっきのコード進行をドミナントマイナーにすると
キーCだと
|C |C |Gm |Gm |
キーG
|G |Dm |C |G |
ストロベリーフィールズ感が出ますよね!
♭Ⅶというコードはロックなどでは
マイナーペンタトニックスケールをルートとするコード群の中の1つ
と捉えることができます。
キーCのマイナーペンタトニックスケールの音は
C、Eb、F、G、Bb
となりBbが含まれています。
ロックや、その大本となるブルースという音楽は音楽理論的には
メジャーとマイナーが混在する
ことでブルージーな感覚、というのを生み出してきました。
つまり、メジャーキー(例えばCメジャー)の場合でもマイナーキーで出てくる♭Ⅶを使用することができる、という考え方です。
ということで、2つの目のドミナントマイナーの考え方が出てきます。
ドミナントマイナーの解釈その②同主調のマイナーダイアトニックコードからの借用和音である、と考える
という解釈が可能になります。
同主調というのは同じルートを持つメジャー調とマイナー調のことです。
つまり、CメジャーとCマイナー、みたいな関係ですね。明るい光と暗い影。
先ほどの「メジャーとマイナーを混在させる」という考え方をキーCで詳しくいうと
Cメジャーダイアトニックコードで作られたコード進行に、Cマイナーダイアトニックコードを一時的に持ってくる(借用する)
ということです。
Cメジャーダイアトニックコードは
C Dm Em F G Am Bdim
Cマイナーダイアトニックコードは
Cm Ddim Eb Fm Gm Ab Bb
となります。
CマイナーダイアトニックコードからGmを借用している、という解釈ですね。
Cのドミナントマイナーを使ったストロベリーフィールズ進行
C ー Gm
は、最初のコードCの時は
「メジャーでキーCだよ〜。明るく始まったよ〜」
と思わせておいて、Gmになった時に聴いている人にCマイナーを感じさせるために
「あ〜、なんか不安な感じ〜、切ないかも、どこにいくのかわからない〜。。。」
と一気に暗雲立ち込める雰囲気がするわけです。
ブルージー(憂鬱感)でありかつマイナー感(暗い、不安)
これが ⅠーⅤm のドミナントマイナー、ストロベリーフィールズ進行に隠された秘密だったというわけです。
ⅠーⅤm7ーⅠ7ーⅣというコード進行との違い
ちょっとマニアックな話になってきていますが、最後に一つ大事なことを書いておきます。
よくジャズやボサノバ、そしてR&B、ソウルなどで使用されていたコード進行で、80年代からいわゆるAORと呼ばれるシティポップなどでも頻繁に使われているコード進行で
ⅠーⅤm7ーⅠ7ーⅣ
というコード進行があります。
キーCでいえば
Ex-1
|C |Gm7 C7 |F |
というようなコード進行です。
ドミナントマイナーの話をする時に、このAOR進行的なⅤm7をドミナントマイナーと呼ぶと説明する方もいますが、この
ⅠーⅤm7ーⅠ7ーⅣ進行におけるⅤm7はドミナントマイナーではありません
このⅤm7は、確かにドミナントであるⅤがⅤm7になるのでドミナントマイナーと呼びたくなりますが、コード進行の機能としてⅠーⅤmのストロベリーフィールズ進行でのⅤmとは全くの別ものです。
このⅤm7は、Ⅳに進行するための
ⅣをⅠと見立てた時のⅡm7を借用したもの
です。なので、この進行ではⅤm7の時は「Ⅳに一時的に転調したように」聞こえます。
Ex-1ではGm7の時にFメジャーに転調したように聞こえる、ということです。
ストロベリーフィールズ進行では Gmの時にCマイナー(Bb)に転調したように聞こえるので、全く違いますよね。
Ⅴm7ーⅠ7ーⅣは、かなり機能的な和声進行。
それに対し ⅠーⅤmは、メジャー旋法(メジャーモード)とマイナー旋法(マイナーモード)を大胆に野生的に行き来する
モーダル(旋律的)な手法 であると言えます。
ドミナントマイナーを作曲に取り入れよう!【不穏な憂鬱感】
民族的なドミナントマイナーの雰囲気
僕も民生さんフォローワーな部分もあり、ということは元はビートルズということであり、やはりこのストロベリーフィールズ進行は大好きです。
10曲作ったら1曲はこの進行がどこかに出てきます。
どことなく民族音楽的な香りもするんですよね。
先ほどからしつこく書いているように、ブルージー、ペンタトニック的であり、旋律的な旋法、
モード(モーダル)な手法
なので、普通の機能的コード進行からはみ出して、民族的な雰囲気を出したい時はぴったりハマります。
民族的であるということは、ギターという楽器が最大に生かされるということです。
ギターで美味しいストロベリーフィールズ進行のキー
ギターでこのドミナントマイナーを使ったストロベリーフィールズ進行を弾きながら曲を作る場合
開放弦がガシガシ使えるキー
が最高にハマります。
なので
① DーAm
② AーEm
③ GーDm
この3つのキーを使うと最高ですね。弾いてても気持ちが良いです。
リズムを3拍子にしたり、6/8拍子にしたりしてもイイ感じです。
ハチロクでストロベリーフィールズ進行というと、こちらも名曲 くるり「虹」(DーAm)がありますね。これも必聴です。
まとめ
- ドミナントマイナーはメジャーとマイナーが交錯するブルージーでドリーミーでトライバルでサイケデリックなイチゴ畑のおとぎ話
- ギターでかき鳴らして光と陰を表現すべし
- 楽曲のAメロ ど頭で使うとビートルズリスペクト(オマージュ)になる